大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

津家庭裁判所伊勢支部 昭和41年(家)223号 審判 1966年12月12日

申立人 杉野タメノ(仮名)

主文

本件申立を却下する。

理由

本件申立の要旨は、「申立人は、被相続人亡杉野和典の実父亡磯野徳衛門の後妻として、婚姻届出は昭和一八年五月五日と遅れているが、実際には被相続人が生後一年三ヶ月に達した昭和六年四月に事実上の婚姻をなし、以来右徳衛門方の家事万端と被相続人の監護教育に専念し、被相続人を実子同様愛育し成長させたが、不幸にして両名共肺結核に罹患し、申立人の懸命の看護も空しく右徳衛門は昭和二五年六月一五日、そして被相続人も翌昭和二六年六月二六日にいずれも申立人に看取られながら相次いで死亡した。そこで申立人は、その後右両名の菩提を弔いつつ今日に至つている。以上の次第につきこの際申立人に対し被相続人の特別縁故者として右徳衛門の遺産で申立人と被相続人とが共同相続した別紙記載の土地、建物に対する被相続人の持分(三分の二)を与える旨の審判を求める」というにある。

そこで案ずるに当裁判所昭和三九年(家)第三四九号相続財産管理人選任審判事件、昭和四一年(家)第一一号相続人捜索の公告申立事件の各記録ならびに申立人および証人今野安蔵各尋問の結果を綜合すると、前記申立要旨に符合する事実が認められる外、申立人が共有持分の分与を求めた別紙記載の土地、建物は、前記杉野徳衛門の死亡により申立人と被相続人のために相続が開始し、熟慮期間三ヶ月が経過した昭和二五年九月一六日に申立人と被相続人の共有物(持分の割合申立人三分の一、被相続人三分の二)となつたものであること、および当裁判所のなした被相続人に関する相続権主張の催告の期間が経過した昭和四一年九月一日被相続人についてその相続人の不存在が確定したことなどの事実が認められる。

以上の事実に徴すれば被相続人の別紙記載の土地建物に対する三分の二の持分は、その相続人不存在のため、民法第二五五条後段により、被相続人の死亡のときに遡及して、他の共有者である申立人の所有に帰属したことになるから、本件申立は失当として却下を免れない。

よつて、主文のとおり審判する。

(家事審判官 浜田盛十)

(別紙省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例